実はみんなが知ってる飲む本みりん

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ライター/ilovemirin片口

こんにちは、99%のみりん蔵から本みりんを集めてしまったみりん好き、 本みりんコンシェルジュ・片口菜摘といいます。

前回のコラムで、本みりんとはを説明させてもらいましたが、ここでは、せっかくなので、お酒好きの方がすぐに楽しめる本みりんを活用したお酒たちを紹介したいと思います。

本みりんなんて飲んだことある人、いないでしょ?いたとしたら、(お酒におぼれた)ダメな人じゃんと良く言われます。本当によく言われます。しかし、実際は皆さん飲んでいるし、聞いたことがあるんです。

今回は、“実はみんなが知っている本みりん”をテーマに、本みりんがどのようにお酒のまま活用されているか紹介していこうと思います。

ー 目次 ー

  1. 『良薬口に甘し』 薬酒のベースリキュールは本みりん
  2. 新年を寿ぐお酒、お屠蘇
  3. 〽すーこし白酒召されたか、赤いお顔の右大臣~
  4. 一度は試したい本みりんを活用したお酒3選

『良薬口に甘し』 薬酒のベースリキュールは本みりん

これはみんな知っているだろう、という本みりんがあります。それは、

養命酒製造株式会社の、そう、“養命酒”です。

養命“酒”のは、本みりんのことなんです。残念ながら、こちらの養命酒は第2類医薬品に含まれるため、善波さんでは販売はできない商品ですが、本みりんを活用して作られる製品の代表例です。

養命酒、口にされた方は、思ったと思います。

「この酒、なんでこんなに甘いの?」

答えは簡単。本みりんがベースだから、です。

養命酒の起こりはおおよそ400年以上前の1600年頃、日本昔話よろしく、ゆきだおれになりそうになった人を助けたところ、その人がお礼に伝えてくれたといいます。

生姜、朝鮮人参をはじめとする各種生薬、決してそのまま口にして美味しいとは限りません。本みりんには、本みりんがもつ旨みで味のトゲトゲしさやカドを丸めてくれる効果があり、苦みも甘さが緩和してくれます。砂糖だけではできない技です。

また、本みりんのもつ糖分が複合的であることから、血糖値の上昇がゆるやかで、砂糖水にスパイスを加えたものよりさらに身体にやさしく、また、生薬を漬ける工程があることで、本みりんが熟成される期間が発生してアルコールを分解するのを補助してくれる成分もみりんの中で生まれます。

ただ、養命酒製造のように医薬品として本みりんを活用して販売しているのは珍しく、多くは一般の酒税法に基づくリキュールとして販売されています。

その代表例が、広島県福山市・鞆の浦の観光を支える“保命酒(ほうめいしゅ)”です。福山市には、日本酒蔵はかつて複数あったにもかかわらず、現在はもう1軒しか残っておらず、その代わり、本みりんの蔵元2軒とリキュール製造の蔵元が8軒の登録があります。本みりんもリキュールも、保命酒のための登録です。

2022年11月に蔵元訪問のため、鞆の浦に行きましたが、その際あまりにも保命酒の蔵がひしめいていて目が飛び出てしまいました。

           
保命酒については、鞆の浦の観光サイトや蔵元サイトの方でも細かな情報が出ています。

元々は、大阪の医師だった中村氏が大火に遭い、鞆の浦へ移住。そこから保命酒の製造を始めます。そのころは、中村屋以外が保命酒を製造することは禁じられていましたが、明治維新の動乱の中で、元祖の中村屋は廃業、新たなほかの蔵元に受け継がれていきました。

詳しくは、オススメ欄で説明しますが、他には、滋賀県長浜市木之本の桑酒、玉泉堂酒造の養老酒などもあります。

玉泉堂酒造さんは、現在は美濃菊などの日本酒、また、本みりんでも非常に有名ですが、その蔵元のおこりは、薬酒である、養老酒だったそう。

これらの薬酒は、もちろんその薬の効能もさることながら、味を活かすならばそれを煮切ってカラメルにしたり、お菓子作りの風味付けにもスパイス代わりとして非常に優秀です。牛乳割りが合うもの多いです。

また、これにさらに焼酎やジンなどを入れると、味がひきしまり、お酒好きにはたまらない甘さとキリッと感が同居したお酒になります。

また、本みりんを使ってお菓子を作ることもできるのですが、その時に使用するスパイスなどをこの薬酒に使われている生薬などから引っ張ってくるととてもよい仕上がりになることが多いです。

新年を寿ぐお酒、お屠蘇

関東以西の本州太平洋側では、結構メジャーな本みりんの飲み方だと思います。寒い地域では、本みりんが結晶化してしまうため、製造があまりさかんではなく、それもあってあまりお屠蘇としての本みりんは盛んにみられません。

また、九州も南になっていくと、江戸時代に肥後藩が“肥後藩内ではそれ以外は造っても飲んでもならない”としていた赤酒が今でも本みりんより勢力が強いため、本みりんではお屠蘇があまり仕込まれません。

屠蘇散、と呼ばれるスパイスや生薬が入った小袋をクリスマスもすぎたころに本みりんに入れ、おいておくとスパイスや生薬の香りがしっかりと本みりんについてたのしめます。

屠蘇散は、シーズン中は比較的どこの薬局でも購入できると思いますが、調合は製造元次第。最低限入っていればいいスパイス・生薬は、桂皮(シナモン)・丁子(クローブ)・陳皮(乾燥したみかんの皮)の3つ。どちらかというと、ガラムマサラではなく、五香粉(ウーフェンシャン)に近いです。

年末に本みりんを蔵元から購入するとおまけでついてくる場合も多く、年末のおせちに向けての準備のときに、本みりんを購入して、同封されているのを見つけるとおもわずホクホクしてしまいます。

ちなみに、お屠蘇を使って、スパイスケーキをつくると最高に美味しいです。

〽すーこし白酒召されたか、赤いお顔の右大臣~

実は右大臣は白酒なんて飲んでなくて、本当は左大臣の方が顔を赤くして酔っぱらっているんだ、などと論争が度々繰り広げられる、有名なひな祭りの童謡、『うれしいひな祭り』。

この、“白酒”皆さん何だかわかりますか?

甘酒のことではありません。パイチュウのことでもありません。“シロザケ”です。

この白酒、ご存じの方もそれなりにいると思いますが、実は、本みりんのもろみをすりつぶしたものです。

この、白酒のヒットは、みりんを醸す蔵の中でも創業してからの歴史が最も長い、現在は東京都東村山市にある、豊島屋酒造さんの存在が大きいです。

江戸時代、にわかに本みりんが江戸で女性が飲む甘いお酒として、それから焼酎で割ってカクテルとして愉しむのが夏の風流な高級カクテル・柳かげとして流行っていた1600年台も終わりの頃。豊島屋では、“九州の方に白酒という、醪を石臼で挽いたお酒がある”というのを聞きつけて、“そうだ!みりんをすりつぶしてみよう!そうすれば女性に…ん?女性か…そうだ!ひな祭りだ!”というわけで、2月限定でみりんのもろみをすりつぶして造った、白酒を販売するようになったそうです。それがたちまち大ヒット。発売日には、ドラクエ発売日と同じくらいかそれ以上の行列ができたとか。今のプレミア酒の行列よりは絶対に並んでる。(※ 発売の様子を描いた資料があったのを思い出してる) そして、その人気は徳川吉宗の時代の大奥まで広がり、江戸幕府にも納められたそうです。

現在、子どもの飲酒は禁じられ、多くのスーパーでは甘酒に置き換わってしまっていますが、その甘さといい、上品さといい、今もそのおいしさは健在です。以前は、宝酒造さんでの製造がありましたが、現在は終売。現在、製造販売を行っているのは、豊島屋酒造さんと、岡山県の藤澤藤衛門商店さんの2軒だけが確認できています。

飲むのはもちろん、余っても肉や魚の漬け床として非常に優秀で、どんな人でも買って損ではない品物です。

販売されるのは、2月の間で、数量限定です。藤澤藤衛門商店さんは、あまり製造数が多くなく、おじいさんとおばあさん2人だけで製造されているため、11月からの取り置き分以外の製造はあまりないのですが、豊島屋酒造では、店頭販売がされます。

一度は試したい本みりんを活用したお酒3選

それでは、これまでに紹介した飲むみりんから、具体的な銘柄を紹介していきましょう。

その1: 豊島屋酒造 白酒

これだけ有名な“白酒”。聞いたことはあるけど…という方にぜひ飲んでみてほしい。

今年のひな祭りは、大人になった貴女も、白酒を飲みながら、久々におひなさまたちと一緒にひなまつりを楽しんでみては。

その2: 山路酒造 桑酒

和製マティーニと呼ぶにふさわしい、さわやかさと程よい苦み、そして抜け感が程よい甘さの中に包み込まれているお酒。血圧を安定させる効果があるとされる桑を贅沢に漬け込んでいる。

この原料に使われている本みりんも非常に贅沢な造りとなっており、より雑味を消すため、原料の麹米・もち米ともに通常食べられる精米歩合よりぐっと米を磨いているという。

お酒をある程度飲めるなら、ぜひ、ウォッカやジン、テキーラを加えて飲んでみてほしい。健康効果が無視されるようにも思うが、桑酒に強いお酒を加えたときの、ぐっと引き締まったおいしさの誘惑には絶対に勝てない。

ちなみに、この蔵元は、本みりんの販売はない。桑酒の原料としてしか本みりんを醸していない。

その3: 岡本亀太郎本店 保命酒

フランスのパリの広場で売られているホットワインを彷彿とさせる、旨味・酸味・香り高さ・スパイス感のある保命酒。本みりん自体の製法も、かなり独特で唯一無二。非常に濃厚で、米からできたとは思えない香り高さ。

保命酒の中でも、その生薬の配合はオリジナルの中村屋のレシピを引き継いでいるとされる。

かつては、宝酒造より大きかった焼酎を中心とした蔵元だったが、困難な時期を乗り越えようとした際、焼酎の免許を他社に引き渡したため、現在は、本みりんと保命酒の製造のみを行っている。

以上が、簡単ではありますが、本みりんと類似調味料の違いをまとめた内容になります。歴史や細かい部分の解説は省いていますが、結構すべてを覚えるのは難しいかな、と思います。でも、納得できる違いではないでしょうか。


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ライター/ilovemirin片口

お酒はほとんど飲めないのに、味と香りは大好き。みりんを集めて活用しまくってSNSを中心に活動。現在、全国の90%の蔵元の本みりんを集めた。みりん呑み会を開催するほか、料理講師やレシピ開発でも実績を積んでいる。 Sake Diploma 2020取得、工業日英通訳として働いていたこともある。

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