本みりんは発酵食品なの?~本みりんの造り方~

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ライター/ilovemirin片口

こんにちは、99%のみりん蔵から本みりんを集めてしまったみりん好き、 本みりんコンシェルジュ・片口菜摘といいます。

絞ったり煮詰めたり乾かしたり。その中でも麹を用いて作る発酵は、日本固有である麹菌の作用を用いて作られる調味料は特徴的です。

本みりんとは、を解説した際に本みりんの材料に“米こうじ”が含まれているとお伝えしました。今回は、本みりんは発酵食品なのか、という永遠の命題ともいえる内容を解説を通して、本みりんの造り方を解説していきたいと思います。

ー 目次 ー

  1. そもそも発酵の定義とは
  2. 本みりんは発酵しているのか
  3. 本みりんの製造工程
  4. 結論:本みりんが造られる工程は発酵のグレーゾーン

そもそも発酵の定義とは

発酵の定義は、液体や物体の中で菌が生きる過程で二酸化炭素とアルコールを排出するように活動していることを指すのが一般的です。多くの菌は、その物体なり液体なりに含まれている糖分を餌にして活動します。ただ、その糖分は、純粋な糖分でなければなりません。分解すれば糖になる、というのは菌は食べることができないのが通例です。

ただ、その通例を破っている菌のひとつが、そう、【麹菌】です。

麹菌は、でんぷんを分解できる酵素を持っており、分解した糖をほかの菌に与える供給源の役割を果たします。

清酒、醤油、味噌などはまさにその作用を使って、麹菌とほかの菌がもちつもたれつ糖を与えて食べて、アルコールと二酸化炭素を絶えず出しながら発酵して作られる食品です。ぷくぷくブクブクと熱や気泡を出しながらつくられます。

この、アルコールと二酸化炭素を出しながら、菌が人間に有害でない成分を出しながら活動している状態が明らかに【発酵】と呼ばれます。狭義で発酵の定義としては必ず外せない部分です。

※おすすめ参考文献
『マンガで読む発酵の世界: 微生物たちが作り出すおいしさと健康の科学』黒沼 真由美 (著),舘博 (監修) 緑書房

本みりんは発酵しているのか

では、本みりんは明らかに【発酵】している、と言えるのでしょうか。

実は、本みりんは清酒や醬油と違って、製造中に二酸化炭素やアルコールを出すもろみをもっていません。なぜなら、蒸留酒に材料を漬けるだけだからです。蒸留酒に蒸したもち米と米麹を浸すだけ、それが本みりんの現在の主流な造り方です。

アルコールは消毒に使われる通り、濃度が高くなると菌は死滅します。一般的には、本みりんではアルコール度数40~60%の焼酎・醸造アルコールが一般的で、その中で菌が生息できるわけがありません。
2カ月間も、そんな環境の中に米麹を置いておけばもちろん麹菌もろとも死滅する、つまり殺菌されてしまうので、もろみの中の菌から二酸化炭素やアルコールを排出されることはありません。

本みりんは、麹菌のもつでんぷんの分解酵素だけで米の甘みを引き出しています。この環境をアルコール度数ではなくて熱で引き出しているのが甘酒です。

だから、本みりん専業の蔵元さんが焼酎に新たに取り組み始めた時、
「本みりんって静かだから、焼酎のもろみを造ったとき、ぼこぼこ泡がでてびっくりしちゃったよね。」
という感想でたというエピソードも。

さらに、菌が駆けずりまわるわけではないから、本みりんのもろみもあまり溶けません。多くの場合、60%程度が粕として残ります。

だから、上記と逆のケースもあって、清酒の場合はもっとドロドロに米が溶けていくので、清酒蔵で新たに本みりんを生産しようと試作した場合に、
「3カ月おいたのになかなか溶けないんだけど…」
と心配され、試作で半年経ってやっと柔らかくなったんだよ、と言われたこともあります。実際はふやけた程度にしかならない2~4カ月くらいで絞ってしまうケースがほとんどです。

本みりんの製造工程

それでは、ここから本みりんの製造工程を解説していきます。
先ほど本みりんの製造工程は、梅酒とよく似ています。私の場合、できるだけお仕事の閑散期に蔵元に伺うようにしていますので、バラバラの写真しかないですが、各工程の様子の写真も添えていきます。

①蒸留酒を用意する(醸造アルコール、米焼酎、粕取焼酎など)

甘強酒造様にて。内製の粕取り焼酎を蒸留中。

②米麹を造る。この時、清酒と同じ温度経過で糀を造ると華やかに、味噌や醤油と同じ温度経過で糀を造るとより芳醇に仕上がる傾向がある。

豊島屋酒造にて。製麹中のお米

③もち米を蒸す。

白扇酒造にて。この時は、臨時で小さな蒸しの設備を使っていたそう。

④蒸留酒、米麹、もち米をタンクに入れ、適度に混ぜる。もち米は混ぜすぎると団子になるうえに非常に重くて混ぜるのが大変

窪田酒造様にて。仕込んで初日のもろみ。窪田酒造さんは、小ロット通年生産。

こちらは漬けて1ヶ月ほど経過したもろみ。やっとみりんとなる液体分が浮き出てきました。

⑤2~4カ月で絞り、オリを取り除く。
みりんのもろみは目詰まりを起こしやすく、ゆっくり力をかけないとしっかり出てこなかったり、蔵元の規模が小さかったりで、槽(ふね)と呼ばれる装置を使う蔵元が8割程度です。

こちらの槽(ふね)は、白扇酒造さんのもの。

⑥蔵元によっては、瓶詰したままあるいはタンクのまま熟成することも。
熟成期間は1~3年が多いです。5年を超えると味がどれも同じと言いたくなる傾向にあるので、3年くらいが一番使いやすくて美味しいです。

杉浦味淋様。もろみ期間の長いみりんを3年熟成で販売している蔵元。濃醇な香りが蔵に立ち込めていました。

ちなみに、日本酒で一般的と言われる“火入れ”(熱を用いて殺菌すること)は、みりんの場合、糖度が高く雑菌も繁殖しにくいので、する派の蔵元としない派の蔵元の両方があります。でも、大概の場合は、「うちのやり方が普通」と思っていて、火入れの有無を尋ねるととても驚かれることがあります。

結論:本みりんが造られる工程は発酵のグレーゾーン

つまりは、殺菌された状態のもろみを生み出して生産される、本みりんの製造は発酵かといわれると、「グレーゾーン」というのが無難な結論。

菌が活きている!活きてる麹で腸活になる!と謳うのはちょっと厳しい。腸活の側面としては、複合糖が含まれているため、それが血糖値の上昇を緩やかにしてくれたり、腸内細菌にとってやさしい存在だったりなどは言えますが、口に運ぶ瞬間まで発酵している菌のおかげで、というのは難しいです。
もし、活きてるから本みりんも火にかけてはダメ!などと言っておられる方を見かけたら、それは妄信となります。

けれども材料である、日本酒の酒粕を用いた粕取り焼酎なり米焼酎なり、米麹なりは、やはり麹菌の発酵なしにはできません。材料は発酵なしには造ることはできないけど、本みりんは発酵を用いているかというと、発酵で生まれた成分を利用しているだけ、となります。

米を用いた酒の中でも、製品そのものを製造する工程として発酵を持たない変わったお酒、それが本みりんです。


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ライター/ilovemirin片口

お酒はほとんど飲めないのに、味と香りは大好き。みりんを集めて活用しまくってSNSを中心に活動。現在、全国の90%の蔵元の本みりんを集めた。みりん呑み会を開催するほか、料理講師やレシピ開発でも実績を積んでいる。 Sake Diploma 2020取得、工業日英通訳として働いていたこともある。

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